母の匂い
す
「お母さん、遅ればせの誕生日のプレゼント」
と、娘が渡してくれたのは、小さな包みでした。
誕生日当日、近くの居酒屋で祝ってくれて、2人で酔っ払って帰ったのに。
「ありがとう。なあに?」
と笑いながら開けると、香水が入っていました。
「もしかして・・あれ?」
私の母が亡くなって1年半になりました。
その母の使っていた香水を持ち帰って、時々使っていたのですが、母の匂いがするその香水が、ついになくなって、捨てることもできないまま置いてあったのです。
先日娘が、
「おばあちゃんの香水の名前、なんていうの?」
と聞くので、裏を見ると、「MITSUKO」と書いてありました。
それまで気にもしていなかったのですが、
「そうか。取り寄せたら、まだ同じ匂いの香水が手に入るんだ」
と思い、ネットで検索しようとしたら、
「私が調べとく」
と、娘。
嬉しい嬉しいプレゼントです。
この香水は、残り香がお香のような匂いがするのです。
母の納骨に、弟と息子の運転するレンタカーで諏訪に行った時、車の中がずっとこの匂いで満ちていました。
確かに朝、この香水をつけてきたのですが、諏訪に着くまでこの匂いがし続けることが不思議でなりませんでした。
「きっと、お母さんも一緒にドライブを楽しんでるんだね」
と、母の骨壷の入った包みを触れながら弟たちと話したものです。
さあ、大好きな母の香水をつけて、今日も仕事に行くとしましょう!!