夏の不思議な出来事パート3です。
一番書くことの難しい話。
何しろ不思議な体験ですから。
昔々、子ども時代にテレビで「不思議な町」というドラマを見ました。うろ覚えですが、ざっとこんな話です。
郵便配達の若者が、配達区域にはない町への手紙を届けるため、虹が出ている時だけ現れるという町に、手紙を届ける。誰から誰への手紙だったか忘れてしまったのですが、虹が消えそうになるので、慌てて町の(橋がかかっていて)外に出た配達員が、振り返っても町がかき消えた、というようなストーリーでした。
こんな体験を、私がしたのです。
2年ほど私の治療室に通っていたAさんは、76歳の元ギタリストの男性でした。
私の治療室の近くに住んでいる、住所も近くの番地で、息子さん一家が階下にいて、自分は2階で外階段から出入りしている、と仰っていました。
一二度、お孫さんと歩いている所を見かけたので、
「この辺りに住んでるのですか?」
と尋ねると、
「この少し先です」
とにこやかに言われます。
べつにどこに住んでいるのか、と強く思ったわけではないのですが、何の気なしに朝の散歩の時など、その辺りを探してみるのですが、Aさんの表札のかかった家は見つかりませんでした。
一軒家で、2階か3階建、外階段のある家は、Aさんが急死され、お通夜にも伺った後も、不思議な事にどこにもありませんでした。
「いやあ、恥ずかしいくらいの古い家ですから」
と、昔は立派な家に住んでおられた話をされていたので、きっとAさんは見られたくなかったんだろう、私が興味本位で見るのはやめようと思い直し、以来Aさんの家を探すことはやめました。
やめて1年後くらいでしたか。
夏の夕方でした。たまたまAさんの家近くを訪問する用事があり、訪問後、何気なく
(この辺りをよく歩いたなあ)
と思って、小路を見ていると、
(あれ?)
見慣れない細い道があり、その先に見慣れない家があったのです。
小さな3階建ての家で、外階段があり、門柱にはAさんの名前がちゃんとある。
(なあんだ。こんなところにあったんだ。)
帰ろうとして、少しふらっとしました。
暑い日で、頭がぼうっとしていて、なんとかいつもの通りに出た時、
(あ、これって、前にもあった・・逢う魔が時?)
そう、前にも書きましたが、人の思念をキャッチしてしまい、彷徨いこむ世界に、また入ってしまったのかもしれない、と思ったのです。
ゆっくり振り返って、確認しました。
Aさんの家も、その前の小路もかき消えていました。
なぜか、Aさんの、してやったり、ニヤリとした顔が浮かびました。
これだけの話です。不思議な体験でしたが、今も時々その前を通る時、Aさんを思い出します。Aさん、忘れないよ。(o^^o)