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たんぽぽ日和

吉屋信子を知っていますか?

 

吉屋信子という作家を知っている人は、60代以降の、まあブンガク少女だった人に限られるかもしれません。

 

ということは、このブログを読んで下さっている読者は、年齢的に該当しないんだ。誰?その作家?

 

この評伝を書いている田辺聖子は、まだ知られているでしょうね。この方の20年ほど上の世代です、吉屋信子は。

 

まあ、2月末から読み始めて、読了まで2か月かかりました。すごい読み応え。

田辺聖子、おせいさんは、色々な女性作家や歌人、古典など書くのに、その方の著書はもちろん、それはそれは多くの参考文献を読み漁って、その方の人となりを充分に把握、咀嚼して、ここが大切なところなのですが、その方を愛を持って書きあらわしています。

 

私が吉屋信子を読み始めたのは、中学校の図書室の少女小説「花物語」シリーズでした。

「赤毛のアン」や「小公女」「十五少年漂流記」「怪盗ルパン」などと並行するように、吉屋信子のブンガクに親しみました。

 

ひとりの健気な少女に、これでもか、これでもかと押し寄せる悲劇。継母、腹違いの兄弟、意地悪な友だち・・でも、心強い味方も次々に現れて、最後に幸せになる少女を描いています。

もう、主人公になりきって、読みふけりましたね。

 

「ゆめはるか吉屋信子」は、吉屋信子という人の人生を書くだけでなく、その背景も深く分け入って描いています。

彼女の父親が役人で、栃木に起こった悲劇の公害“足尾銅山鉱毒事件”に関わっていたため、この事件も、実に詳細に、天皇に直訴した田中正造についてもかなりページを割いて書いています。

当時の女学校について、学友のこと、戦争のこと、多くの作家のこと・・

 

さらに、吉屋信子の著書も。あらすじが詳しく書いてあり、手に入れて読まなくても、この本一冊で、彼女の作品のあらかたを読んだ気分にさせてくれました。

 

また吉屋信子は、生涯のパートナーと人生を共にしましたが、その人は門馬千代という女性でした。今で言うセクシャルマイノリティーの先駆けですね。

私の好きなムーミンの作者、トーベヤンソンも伴侶は女性でした。

 

世間の偏見を追い風に、多くの作品を書き、沢山の友人に囲まれて、生活を愉しみながら、77歳の人生を閉じた吉屋信子。

 

ちょこちょこと読みながら2か月もかかった作品ですが、久しぶりに心から楽しんで読みました。長い長い絵巻物を読んだような達成感が残りました。

 

サボっていたブログですが、あっという間に4月もおしまい。美しい季節になりましたね。

またぼつぼつとブログ書いていきます。(*゚∀゚*)