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たんぽぽ日和

おほほ、おはようございます。

朝9時に予約を入れたSさんです。

86歳、初めての方。

前の日、

「もしもし、わたくし(私の事はわたくし、と言われます)Sの家内で、生前主人がそちらでマッサージを受け、お世話になりました」

「Sさん・・」

記憶にありません。まあ、私の事ですから忘れているのでしょう、後でカルテで確認します。

「そうですか、ご主人はいつ亡くなられたのですか?」

「2年前でごさいます。ご報告が遅れまして」

「はあ、それで、どうされました?」

「実は、息子の事でご相談したいと思いまして・・」

「ごめんなさい。今治療中で、あとでかけなおしますね」

「そうでしたか。夜こちらからかけさせて頂きます。」

 

そして夜、電話があって、50代の息子さんが薬物依存で困っている事など、ご相談がありました。

「息子さんとこちらに来られる事はできますか?」

「それが、引きこもっておりまして、私だけ伺ってお話しできるでしょうか?」

困ったなあ、カウンセラーではないしなあ、でもこの方を治療しながらだったら相談できるかなあ、と思って、翌日朝一の予約をした訳です。

 

こちらには、行き方をよくよく説明して、最寄り駅からタクシーで来て頂くことにしました。

ところが・・

「どうも大分先まで来ちゃったみたいで、降りてもよくわからないんです」

え〜!

「そこからなら、来た方向に引き返してください。」

と、道順を説明するのですが、

「回りがうるさくて、電話の声が聞こえないの。もう一度おっしゃって。はあ?」

やりとりの後、

「もう疲れちゃったわ。ちょうどここに座るところがあるから、ここで待ってます」

え〜え〜!(汗)時間ないのに!

 

大急ぎで自転車でそこまで行くと、イラストみたいに、ちょこんと座った可愛いおばあさんが、ニコニコ笑ってお辞儀されました。

「おほほ、おはようございます!」

 

「私どこもわるくなくて、お薬も飲んでないんです」

「まあ、86歳では珍しいですね」

「健康だけが取り柄。おほほ」

息子さんのことをあれこれ話しながら治療しました。首を施術すると、ぐっすり眠られていて、終わると、

「マッサージって、初めて受けたけど、気持ちがいいものですね。主人も通うはずです」

「それが、カルテをさがしましたが、どうやらご主人を治療してないようなんですよ」

「まあ、じゃあ、どうして主人のメモにあったのかしら」

「不思議ですね」

「でも、主人から聞いていて、娘さんがいるでしょ?小学校に通っている・・」

はあ?

「いえいえ、娘はいるけど・・会社員です」

「奥様も治療されているんですね、今日はご主人は?」

「実は今日、主人の祥月命日でして、亡くなって丸22年になります。ご主人は男の治療師さんにマッサージされていたのですね」

「そうです。まあ、まあ、なんてことかしら」

このあたりで、ご自分の勘違いにようやく気づかれたようです。

 

「でも、縁なんですよ。主人の命日に来られたことなんか、何かいいことが起こる兆しかもしれません。息子さんの事はご心配でしょうが、これからはもっとご自分のことを大切にしてくださいね。お身体、とてもお疲れでしたよ」

「そうね、身体も心も軽くなった気持ちがします。また寄せてください」

そうおっしゃって帰って行かれました。やれやれ、でした。^_^;