二月の怪
またしてもケーブル断線二月の怪
こんな内容は、ブログとして如何なものか、と思うけれど、どうしても書きたいという気持ちを抑えがたく書いてみます。お付き合いください。
障害者施設に住むIさんの話です。Iさんではなく、タエさんとします。
タエさんは75歳、頚髄損傷の四肢マヒの患者さんで、私が通い始めて15年になります。
頚髄損傷になったのは、飛び降り自殺の未遂、つまり助かってしまったからで、夫から離婚を求められた時、開いていた3階の窓から発作的に飛び降りてしまったのです。高校生から小学生までの子どもが3人残されました。
タエさんは今の施設に入所して23年。
はじめのころは車椅子で散歩したり、不自由ではあっても、絵や字を書いたり、機織りを楽しんだり、旅行にも行っていました。
カウンセリングを受けていましたが、だんだん手足が思うように動かせなくなり、私がリハビリマッサージに通うようになりました。
足は全く動かせませんが、両手は手先だけ動きます。頭はしっかりしていて、口も達者です。
そのタエさんが、この1年で、本当に寝たきりになりました。トイレも自力でできなくなりオムツになって、コロナ禍でもあり、自己管理もほとんどダメになりました。
ところが、これは介護者がそうしてしまったのだ、と客観的に私は思っています。
タエさんは、1年前まで何でも自分でできる患者でした。すぐにナースコールを押して、トイレに連れて行ってもらったり、必要なものを自分で電話してお店に持ってきてもらったり、タクシーを呼んでショッピングに行ったり、月一度来る息子(1人だけ)とご飯を食べに行ったり。通販を利用して服を買ったりしていたのです。お菓子がバスケットにいっぱい入っていて、冷蔵庫には好きな冷凍食品がぎっしり。
朝はお化粧もしていましたね。
1年前まで。
じつはタエさんは施設の棟が変わり、昨年春に今の棟に引っ越してきたのです。
コロナ禍で、しばらく月1回来ていた息子とも会えない日々が続いているうちに、タエさんの訴えが始まりました。
「職員のTが、私を叩くのよ」
「昨日は、お風呂に入れてもらえなかった」
前歯に職員の手が当たって、差し歯欠いてしまった時は、さすがに私も事務局に報告しました。
ところが、訴えても事務局は動いてくれませんでした。人手不足は切実な問題でしたし、何よりタエさんは認知症がひどくなっている、というのです。
タエさんのナースコールは隠され、排泄はすべてオムツに、そしてタエさんは鬱になりました。
この寒い冬、私が訪問すると、タエさんは毛布だけで寝ていたので、昨年掛けていた羽毛布団はどうしたのか聞くと、
「寒いからお布団かけて、と言っても、ないっていうのよ」
電気毛布は、なんとか事務局に探してもらって足下に敷いていましたが、そういえば、温かい羽毛布団があったはず。
これも、寒波到来に間に合うように、なんとか事務局に探し出してもらいました。
そして、冒頭の句にあるように、唯一の通信手段であるケイタイ(ガラケー)のケーブルが壊されるようになりました。
しかも、昨年秋から5本目です。
このケーブルについては、事務局に行って、断線されたケーブルを見せ、対応を迫りました。
毎日タエさんから電話が入ります。内容はほとんどが足の痛みと職員からのイジメの訴えです。
私とて人間、ケイタイが無ければ、この電話を受けなくて済むな、とどこかで考えてる。
もうじき充電が切れるので、これから電気屋でケーブルを買ってこなくてはいけません。
でも、もし私がこの手を離したら、タエさんはどうするだろう、と考えます。
一介の訪問マッサージ師の私が、越権行為では、とも考えます。
メディアで盛んに報じられている、医療現場や老人ホームでの職員や看護師によるイジメなんて、大いにありうる、表面に出るのは氷山の一角なんだ、としみじみ思うのです。
この1年、あれこれと迷い、悩んできました。
でも、ここで尻尾を巻いて逃げるのは私の生き方じゃありません。
たんぽぽさん、72歳、頑張るしかない、負けないぞ❗️
o(・x・)/